日本の近代思想

日本近代思想概論 | 記事URL


日本の近代を支えた思想を振り返ります。

思想という言葉は、多くの言葉同様に多義的であることを免れません。とはいえ、「思索の、おおむね体系化された結実」というほどの意味に、大方の合意はできているとみることができましょう。辞書の定義も大同小異で、一例を挙げると、『広辞苑』(一九九八年刊行の第五版)には、「思考内容。特に、体系的にまとまったものをいう」と記載されています。

ほぼこれが慣行的な定義ですが、少し細かくみると、思想という言葉で想像される枠組が、よりはっきりしてきます。一つは、思考の内容を意味するという点です。思索するという活動は思惟・思考などと呼ばれ、また活動のもつ主体性に力点を置く場合、精神という言葉が宛てられたりします。いま一つは、なんらかの体系性が想定されているということです。それを欠くと受けとめられた場合、意識あるいは直観として、思想から区別されるのが通常です。その一方で思想は、哲学ほどの厳密性、体系性は求められず、人生観、社会観などという次元の不定型性を含むとも理解されています(世界観となると、究極性、絶対性が強く、哲学色が濃くなります)。

思想は、ほぼこういう枠組のなかに位岡する「考えられたこと」と受けとめられてきました。福沢諭吉の思想とか柳田国男の思想という場合に、もっともよく当てはまります。



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